「物価高騰、主役の動向」
物価の高騰が続く中で、その主役はコメで前年比40%の値上がりになっている。
農林水産省は2025年産の主食用米の等級検査を発表、
最も品質の良い「一等米」の比率は77.0%で昨年と同水で平年並みとなった。
25年産の主食用米の生産量は747万7000千tを見込み、政府備蓄米を含む。
26年度の生産は需要見込みを694万t~711万tの最大値をもとに試算し、
前年比2%減の711万tで正式に決定した。
これでコメの値上がりは解消できるのだろうか、来年度がヤマ場になる。
JA全農は11月~2026年5月に各県JAなどへ供給する肥料を4.3%値上げすると発表、
肥料価格は昨年にかけていったん落ち着いていたが、
農家は燃料代や人件費などのコストが増える中で、再びコスト上昇で負担が大きくなる。
国内で流通する肥料の約7割はJAグループが扱っており、
6月と11月の年2回見直す販売価格が指標となり、個人農家の営農費における肥料の比率は8%、
市場流通が主流の日本では農作物のコストは転嫁されにくく、農家の経営を圧迫する。
又、農家の最大の課題は高齢化による米作の継続が難しいことであり、
総務省公表の人口推計によると、65歳以上の高齢者は3619万人で、
総人口に占める割合は29.4%で過去最高を更新、2040年には3928万人で34.8%を推計している。
農業人口も同様に毎年60万人が離れている現状から、コメの生産を維持していく課題は大きい。
「コスト削減の工夫」
ファミリーマートはおにぎりや弁当などの消費期限を従来の19時間から2時間延長した。
時間が経過してもご飯が固くならない炊飯技術を開発し、
店舗に陳列する時間を長くすることで、店舗配送を1日3回から2回に減らし、
コストが増える中で、食品ロスや物流費を減らして店舗の負担軽減につなげる。
又、同社は商品の値引きシールを刷新し、「涙目」のキャラクターをあしらったデザインで
来店者の感情に訴えるイラストで値引き商品を訴える。
商品はおにぎりや弁当の他、パンや惣菜などの10種類を対象に実施し、
社内の成果分析によると、対象商品の廃棄を5%減らす効果が見られた。
同社の全店ベースでは年間3000t規模の廃棄削減につながる計算になるという。
このファミマの「涙目」シールは幅広くパン・肉・魚・ケーキの4デザインを追加し、
フリー素材としてファミマのコピー機やホームページを通して活用できる。
「ムダ取り・生産性アップの取り組み」
DS大手のトライアルHDはNECと組んで流通各社のデータを共有する仕組みを作り、
メーカーや同業の小売り60社が参画し、在庫管理や物流を効率化する。
経済産業省によると2024年小売り販売額は約167兆円で、
このうち非効率な商慣習によるムダなコストは40兆円ほどかかっていると想定する。
先ず各社が持つ売場や出荷・在庫データ、POS情報を共有化し、
メーカーから卸、小売りに至る商品の流れを共有化出来るようにしてボトルネックを発見、
集めたデータはAIを使って分析し、生産や発注を日々の需要動向に合わせて調整する。
又、欠品に伴う機会損失の削減や過剰在庫の見直しで物流の平準化を後押しする。
食品卸のプレコフーズは東京都内の飲食店約3割に食品を供給している中、
人手不足で飲食店の倒産が増えており、仕込みの代行や少量注文に対応している。
4月にはスーパーや飲食店へ惣菜を作る部門を立ち上げ、
焼鳥用の串差しやチャーシュー用の糸巻きなど、肉を焼く前の工程作業をやるなど、
豚バラの脂少なめ、肉の厚さ5mmや巾3mmなど細かな要望にも対応する。
小売りや飲食における仕込み作業は人手不足環境では深刻な課題になっている。
物価上昇のインフレ経済が続く中で、消費は締まり小売り飲食業の経営を圧迫する。
その中で業務のムダ取り、ロスの削減は地味な作業だが体力強化にもつながり、
各企業・店舗では販売と合わせて取り組んで行く意義は大きい。
<スーパーの惣菜・米飯・寿司>
<紅葉握り寿司>

*街角通信は毎週1回、配信しています。


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