物価高・経費高の中、自店の特性を打ち出すMD

「景気と消費のアップダウン」

内閣府発表の7~9月のGDP速報値は名目で前期比0.5%増、年率0.9%増で、

個人消費は夏の賞与と定額減税効果もあり、前期比0.9%増と連続プラスになった。

8月のコメの売上は前年比2.4倍、パックご飯は約3倍に伸びて消費を押し上げ、

価格帯の高い車やスマートホンの販売も好調だったことが挙げられる。(日経)

又、同発表の10月街角景気は判断指数DIは9月比0.3%減の47.5で、

8か月連続で好不況の分かれ目である50を下回った。

住宅ローン金利の上昇で大きく下がった他、家計関連は0.6ポイント低い46.4、

小売り関連は1.9ポイント低い44.0となった。

2~3カ月後の先行き指数は1.4ポイント低い48.3、小売り関連は46.5に留まった。

今後、消費は生活に必要な日用品とその他の消費には差が大きくなってくる。

「物価と食料品」

物価高はコメをトップに鶏肉やイワシ・サンマなどの魚介品の値上がりもあり、

消費支出に占める食費の割合(エンゲル係数)は急伸しており、

22年の26%から24年7~9月は28.7%まで上昇した。

欧米先進国中で最も高く、物価は肌感覚では数年前の2倍に感じる商品もある。

物価上昇の中で消費を保っているのは、女性の進出による共働き世帯の増加で、

その結果、割高でも総菜などの中食の割合が増えており、23年は15.8%に上昇した。

消費はこの先を考えると高齢化という大きな問題を抱えており、

団塊ジュニア世代が75歳以上になる2040年には1人世帯が27.4%、

2050年には28.9%となり、東京では35%を超えると予測される。

又、75歳以上の世帯数は2050年に全世帯の28.3%となり、地方ほど比率は高くなる。

この人口動態を捉えて、小売店はサイズ・容量の少量化、少量で高単価でも美味しい商品、

少量でもいろいろ食べられる組み合わせ商品などを重視していく必要性は高い。

「消費の二極・多様化に対応する小売店」

24年半期・4~9月の決算発表が続く中で、

三越伊勢丹HDは純利益が前年同期比71%増の253億円で13年ぶりの最高益だった。

時計や宝飾品などの高額品、高単価な衣料品、インバウンド向けが好調に売れた。

一方、DSのドンキホーテを運営するパンパシフィックインターナショナルHDの

7~9月の連結決算は前年同期比25%増の410億円だった。

同社ではインバウンド消費とディスカウント事業で業績を上げている。

外食では大衆を客層にするすかいらーくHDの1~9月の連結決算は

前年同期比2.3倍の104億円でメニューの見直しや効率化運営が業績を上げた。

主力FRのガストは4月に6割の商品で値上げしたが、客単価増の好結果につながった。

各企業の客層は異なる中で、消費者は自分に合った業種業態で賢く消費をしている。

ただし同業態で客層を同じくする小売店では競争が激しくなっている。

「自店の特徴を売り出す」

西日本でGMSを運営するイズミは部署横断の食品のPBを立ち上げる。

現在は惣菜の「ZEHI」やセブン&アイの「セブンプレミアム」を扱っているが、

物価高で消費者の節約志向が強まる中で商品戦略を見直している。

イズミは今年に入り、西友の九州事業や大分県の食品スーパーを買収し体制強化を図る。

九州地盤のトライアルHDは対抗策として専用アプリを組み合わせた「顔パス」を始め、

セルフレジの前でカメラの前で目線をやると一瞬に清算が出来る。

22~23年にこのシステムを導入したところ、顔パス決済を利用する顧客は

1人当りの来店頻度が1.6倍になったという。

このシステムは利用客が買い物の手軽さを重視する小型店と相性が良いという。

九州に出店攻勢を強めるロピアは、コスパを重視した「モンスターバーガー」¥999、

バーガー自体は500g以上、「毎日数量限定」「欲望のままかぶりつく」など

ユニークなPOPで来店客の購入を後押しする。

特徴ある商品は高ボリューム高単価で、コスパで見るとお買い得品になる。

スーパーの同質化競争が激しくなる中、自店の特徴を高める競争が強まっている。

自店商圏の一定客層を固定客として取り込む戦略によって

消費が二極化・多様化していく中で効果を上げている企業が目立っている。

<スーパーの惣菜・米飯・寿司>

<キッシュ&フライドチキンセット>

*街角通信は毎週1回、配信しております。

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