「経済好調の表裏」
恒例、内閣府発表の12月街角景気(DI)は
前月から0.5ポイント上昇の49.9と2カ月連続でプラスになった。
百貨店中心に年末商戦の手ごたえを感じる企業もあるが、
日常的な消費意欲は乏しいとの見方は多い。
家計動向DIは0.6ポイント高い50.2、小売り関連は1.2ポイント高い50.4で、
年末商戦を下支えした内容になったが、
2~3カ月先の先行きDIは0.6ポイント下がって48.8に留まり、消費意欲は慎重だ。
国内経済を支えているのは訪日消費で、2024年の消費額は8兆1395億円、
客数は3068万人で共に過去最高になった。
国・地域別消費では中国が1兆7335億円で最も多く、次に韓国・台湾と続いた。
矢野経済研究所によると、23年のアパレル小売り規模は8兆3564億円で、
訪日消費はアパレルに並ぶ規模まで拡大してきた。
要因は長く続く円安が大きく、25年に円安修正が出て来ると状況は変わって来る。
2024年全国の企業倒産件数が11年ぶりに1万件を超え、
原材料と人件費の上昇で経営が圧迫された中小・零細企業の倒産が増えたのが主因だ。
倒産件数が1万件を超えるのは東日本震災の影響が残る13年以来で、
倒産の大半は中小・零細企業で従業員5人未満が7582件と75.8%を占める。
増加の主因は物価高と求人難による人手不足で、
従業員の退職や採用難、人件費高騰が原因とする倒産は1.8倍の289件だった。
「小売り3年ぶりの減益と難題」
小売り主要企業の24年9~11月期の営業利益は前期比5%減、四半期ベースでは3年ぶり、
要因は長引くインフレで家計の購買力が低下し、購買点数が減っている。
特に食品等生活必需品を扱う、スーパーやコンビニの業績落ち込み目立ち、
26社の営業利益合計は23%減の1806億円と第二四半期より拡大した。
要因として24年11月の消費者物価指数は前年比2.7%上昇、3カ月ぶりに伸び率が拡大、
生活必需品の安値志向が強まり、値上げによる「値上げ疲れ」が広がった。
2つ目の要因はクーポン・ポイントなどの販促費が増加と賃上げによる人件費の増加だ。
堅調なのは訪日客によるインバウンド消費が強く、百貨店は最高益を更新する。
小売り業界への逆風は収まりそうもなく、国内の食品や日用品を中心にメーカーの値上げ圧力
は強く、帝国バンクによると、食品メーカーの25年1~4月の値上げ品目は6000以上と、
24年の約半数に達し、値上げ率は平均18%に24年を上回る。
流通や外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンは2025年の春期労使交渉で
流通部門の要求はパート時給を金額で80円・率で7%の賃上げ、
正社員はベースアップアップを含む賃上げは平均1万7000円以上を目標とした。
小売り大手のイオンではパート7%・社員6%の賃上げ案が出ている。
長引く売り手市場と物価高を受けて、25年大卒初任給30万円時代が訪れた。
新卒採用の売り手市場を背景に2024年までの3年間で主要企業の平均初任給は
約9%上昇して賃金全体の伸び率を大きく上回っており、
ユニクロのファーストりは25年3月以降に入社する初任給を33万に引き上げた。
リクルート調査で大卒求人倍率は1.75倍で3年連続の上昇、
今後、退職者の増かが見込まれる中、多くの企業が若手の採用を急ぐ。
「インバウンドで人気メニューの製造DX」
日本を代表する料理となったラーメンが新たな技術の受け皿になっている。
ダイキン工業は空中に舞う粉がエアコンに入り込むのを防ぐフィルターを投入し、
不二製油はビーガンが食べられる植物由来のダシを提供する。
多くのラーメン店が長年悩んでいる粉が宙を舞いエアコンの機能低下を招く問題に対し、
ダイキンが天井吊り下げ用の高機能フィルターの供給を始めた。
費用は1台当り10~20万程度かかるが、エアコンの洗浄費用と比較し、2~4年で回収できる。
国内経済はインバウンド消費で好不況が現れ、
人口減少が続く中で人手不足が人手確保競争に拍車をかけて人件費が増加、
小売業にとって、物価高・人手不足・人件費高の3重苦が今後重く圧し掛かる。
<スーパーの惣菜・米飯・寿司>
<カラフルロール寿司>
*街角通信は毎週1回、配信しております。
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