客層を明確にした商品・売場開発の重要性

「消費の二極化が進む」

消費関連景況感を示す「日経消費DI」の1月判断指数は、

プラス10と2四半期連続で上昇、冬のボーナスを受けて住宅やスポーツ・健康関連が改善。

しかし、今後3カ月の売上と客数のDIは下落しており、不透明感がある。

消費者心理が冷え込む要因として、

84%の企業が「商品・サービス価格の上昇」と答えている。

25年は4月までに前年同期比6割増の4000品目以上の飲料・食品が値上げ予定だ。

 

生活者の買い物行動はどう変化しているのだろうか。

全国15~79歳の男女5万人の生活者からライフスタイル情報を、

調査会社のインテージSCIで見ると、24年に回答率が最も増えたものは、

・「銘柄にこだわらず安いものを選ぶ」の31.9%、伸び率19年比4.5

・「好きな銘柄でも高いと他の銘柄を買う」39.6%、伸び率19年比4.1

・「ネットやチラシの商品を買うことが多い」20.1%、伸び率19年比3.9

・「買いなれた商品をつい買ってしまう」68.6%、伸び率19年比3.9

なじみの商品を買う人が多いが、節約の為の買い物行動が伸びている。

 

この消費行動を受けて24年小売り業態の業績は、

・スーパーの売上高は前年比2.7%増だが、買上げ点数は1.2%減少。

・百貨店の売上高は前年比6.8%増だが、全国10大都市以外の百貨店は0.5%減となった。

食品の値上げが売上に寄与した面はあるが、値上げ疲れが広がっている一方、

高額品の消費がけん引している百貨店には影響が薄い。

 

「商品開発のニーズ探し」

日本コンニャク協会によると23年のコンニャク加工品の輸出額は13億9700万円で、

コロナ禍の19年度に比べ2.6倍に伸びた。

製品形態別ではコンニャク麺が6割を占め、海外ではラーメンやパスタの麺にしたり、

ドレッシングをかけて食べられているという。

コロナ禍を経てダイエット志向が高まり、健康食品として関心が高まった中で、

カロリーの低さや食物繊維の豊富さが魅力となり、日本食人気と円安が追い風になっている。

 

カゴメは野菜ジュースの復権に向けて、節約志向の消費者を納得させる知恵を絞り、

良い原料と良い技術を組み合わせて、「カゴメ人参ジュースプレミアム」を発売、

国産人参を使い、旬の冬季に収穫されたものを専用の機械ですりつぶす独自製法で、

雑味のないすっきりとした味わいを出す。

開発の背景には野菜ジュースの動向がここ数年は苦戦しており、

2017年時点で2080億円に達した国内野菜飲料市場は23年2割近く減少している。

カゴメの人参飲料はトマトの1割以下にすぎないが、

人参は野菜ジュースの多くに使われており、魅力が伝われれば野菜飲料全体に良い効果が期待できる。

 

セブンイレブンの商品開発の中で梅干おにぎりの梅について、

当初は練り梅を使用していたが、食感が乏しいとして種抜きの梅干しを産地に要望し、

産地では設備のない中、手作業で一つ一つ種を抜き対応した。

セブンの厳しい要求について、同社はまず今の消費ニーズを捉え、

どんなコンセプトの商品を作るかを考え、それに応じた原材料を選び仕入れて行く。

時には世に知られていない原材料を見つけ出し、採用するケースもあるという。

 

「商品特性を生かして売場開発」

東急ストアーは24年にスタートした中期計画で「鮮度・品質・健康」の3つの価値を追求、

そのモデルとして三軒茶屋店の総菜売場で調理のライブ感・デリカの品揃えを取り上げ、

総菜売場では大きなガラス張りの厨房を新設し、鉄板焼きやピザ調理を見えるようにした。

総菜の品揃えは改装前に比べ約30品目増やし、競合と差別化しやすい総菜を強化し、

同店で初めて厨房に加熱調理と圧力調理まで1台でこなす万能調理器「パリオ」を導入、

生鮮売り場の素材を使い、家で手間や時間のかかる総菜や弁当などを売りにする。

スーパー各社は総菜に注力しており、23年の総菜の市場規模は5%増の10兆9827億円だった、

インフレ傾向で外食が高くなり、相対的に総菜の割安感から消費者の需要を取り込んでいる。

 

北海道で5店舗を展開する「生鮮市場」は隣接地に出店した「ロピア」に対し、

生鮮品で高品質を追求し、バイイングパワーで劣る非生鮮では安売りに組しない。

青果物モリワキの野菜や果物は低価格ではないが鮮度は高く、

鮮魚では三枚おろし等の加工や地方発送などのサービスを提供し、売上高は前年を上回る。

同店の生鮮食品の売上比率は60%強に達し、粗利益率も生鮮が非生鮮を上回り、

この強みを生かすのがモリワキの基本路線で、生鮮比率は年々高まっている。

 

個人消費は節約志向が高まる中で、高額品を求める人や商品鮮度を支持する人等

消費ニーズは多様化している中、消費者のターゲットを明確にした商品・売場づくりが重要になっており、

その目標に対し徹底して追及することが求められている。

 

<スーパーの惣菜・米飯・寿司>

<中高年・女性弁当>

*街角通信は毎週1回、配信しております。

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