「小売り・外食の戦略」
食料価格の高騰が個人消費の重荷になっており、
総務省の家計調査によると、2024年の消費支出は前年比1.1%減少し、
消費支出に食費の割合示す「エンゲル係数」は28.3%と1981年以来の高水準になった。
食料などの「基礎的支出」と娯楽などの「選択的支出」に分けると、
基礎的支出は実質0.4%減少の反面、選択的支出は前年比0.4%増えている。
消費動向が変化していく中、小売り・外食企業の戦略に特徴が出ている。
埼玉県地盤の食品スーパーのマミ―マートは
生鮮食品の品揃えを強化した新業態「生鮮市場TOP」と、低価格が売りの「マミープラス」の
2業態を今後の出店に力を入れる。
生鮮市場TOPでは料理好きをターゲットに生鮮品を拡充、イチゴでは複数の品種を用意し、
精肉では生ラムや鳥のトサカなど珍しい商品を扱い、
牛は1頭買いで希少部位マイノミやミスジなども販売し、味付け肉や大きめのブロック肉や
鮮魚では対面販売や漬け漁などの時短調理品を多くそろえる。
又、価格面で大容量パックや箱売りで単価を上げ、週に1回のまとめ買いを取り込む。
熊本県地盤の弁当・惣菜専門店ヒライは弁当・惣菜や菓子の販売の他に丼物や麺などを
提供する飲食スペースを設けて、巾広い需要に対応できる店づくりで出店する。
又、売場の一角にある調理スペースでは、夕刻になると「厚焼き玉子」が実演販売され、
調理の音と香りで来店客の食欲を刺激する。
同社は弁当などの路面店とス-パーやSC内のテナントショップもあり、
調理済みの弁当や総菜はセントラルキッチンで製造し、
原材料の値上げが続く中、トヨタを手本にした業務の効率化を全社で徹底する。
日本マクドナルドは2027年までの3カ年経営計画の中で、店の大型化やIT活用を柱に
全店売上高で年平均4~6%の成長を目指す。
出店・改装に伴い、従来比2倍の製造能力がある厨房機器を導入し、
地方や郊外店でドライブスルーを追加し、店の販売能力を引き上げる。
現在設置しているタッチパネル注文や「モバイルオーダー」方式を全店に拡充する。
健康機器大手のタニタは食品卸大手の国分グループと法人向けに冷凍弁当事業を始める。
製造から配達までの体制を整え1都7県でサービスを始め、
社員食堂がない中小企業などで福利厚生としての利用を見込み、
レシピ本やタニタ食堂に続く健康ブランドを育てる。
新サービスでは社員は安く購入出来、野菜を豊富に使った料理や塩分を抑えたメニューで、
社員の健康にもつながり、医療費の抑制も期待できると見ている。
「食資源の確保と対応するMD」
人類にとって養殖魚が肉に匹敵するたんぱく源になりつつあり、
世界の養殖魚の生産量は30年間で4倍強に増え、
すでに牛肉を超えて32年には約1億1000万tに増え豚肉や鶏肉に迫る。
漁食は和食ブームや食の多様化で世界に広がっており、
国連食糧農業機関(FAO)が掲げ養殖生産量を30年には20年比30%に増やす方針だ。
FAOによると魚貝、エビなどの養殖生産量は22年に9440万トンとなり、初めて天然の漁獲を超えた。
イトーヨーカ堂は国内で陸上養殖したサーモンの取り扱いを始め、
陸上養殖を手掛けるひらやまと連携し、先ずは東京都などの5店舗で販売する。
ひらやまの養殖サーモン「桃太郎サーモン」をイトーヨーカ堂大森店や
ヨークフーズ新宿富久店など5店舗で売り出した。
ひらやまの陸上養殖システムは天然地下水をかけ流しで使用し、
温度調整や水の殺菌設備など大掛かりの装置が不要で、投資額を押えられる。
又、地下水を使用する為に赤潮等の被害はなく、臭みのないサーモンに育つのが特徴。
輸入豚肉の生産地である欧州では畜産事業者の収益悪化で減産が進み、
1月にはドイツで家畜伝染病が確認されて豚肉相場は先高感が強まり、
日本国内の卸値は上昇トレンドが続く。
大口需要先となるラーメン店は食材の値上がりで経営環境が厳しくなり、
2024年には倒産が過去最多となった。
チャーシュー麺に使う肩ロースは、輸入品の国内卸値が指標となるデンマーク産が
1kg¥810~830と前年同月比6%高になっている。
手軽に食べられるラーメンは「1000円の壁」があるとして、1000円を超えると客足は落ちる。
食材の値上がりは止まらない。
値上りが続く中で商品の値上げは必須の状態であり、
値上げしても販売点数の影響を最小限に留める為には、
商品に原料の特徴や製造方法の違いなどの付加価値を付けた商品開発が欠かせない。
<スーパーの惣菜・米飯・寿司>
<手鞠寿司>
*街角通信は毎週1回、配信しております。
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