「小売業業績と経営の変化」
国内上場企業の2025年3月期の純利益が4期連続で過去最高を更新した。
全36業種のうち26業種で損益が改善し、小売業は6.3%の増収、10.2%の増益となり、
26年3月期も増収、増益を予想している。(日経)
小売業の中でもDS店「ドンキホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルHD
の業績は15年連続で最高益を更新する見通しで、株価は上場来の高値圏にある。
足元では客数増が続くインバウンド需要を取り込み、免税売上も過去最高を更新する。
さらに注目すべき点は今期予想の営業利益率は7%と、
2月期決算の小売業63社の25年2月期平均(3.6%)のほぼ2倍の水準にある。
同社は顧客に近い現場に権限を委譲させることで変化に対応しており、
人事システムでは店舗ごとに収支責任を取り、売上高・粗利益・在庫回転日数の3つの
経営指標(KPI)で従業員を評価し、成果に応じて半期ごとに給与に反映する制度が特徴。
売上高販管費は24年6月期で24.9%と前年より1ポイント程度改善し、
19年に完全子会社化したユニーの営業利益率は6.4%と大幅に改善している。
PPIH流の権限移譲システムはチェーンストアシステムに対して大きな視点を与えている。
「小売業・生産性改善の課題」
2023年の日本の時間当りの労働生産性は56.8ドルでOECD加盟する38か国中29位で、
1人当りの労働生産性も9万3663ドルで同32位に留まっている。
国内GDPの7割を占めるサービス業は中堅・中小企業が多く、
日本のサービス業の生産性は20年に日米欧21か国中15位で、11位の製造業と比べても低い。
スーパーの運営には流通のムダを排してコストと価格を下げて還元する考え方が根底にあり、
効率化が進んでも安く売ることが取り上げられ、価格競争は続いている。
高付加価値な商品・サービスを生み出して需要を創造し、
利益を得て生産性を高めて賃上げに結び付け、
それによって購買力が高まり企業収益を高めるために必要な事は。
日本の働き手は人口が減る中でも女性やシニアの労働参加により増えて来たが、
それがいよいよ減る局面にはいり、働く意欲を持つ一人ひとりが力を発揮する時が来た。
一例として、大雪に見舞われる新潟県南魚沼市の古民家ホテルryugonでは、
一人の女性が厨房準備・郷土料理のクッキング講師・三味線で宿泊客に民謡を披露するなど
「一人3役」でホテルを支えている。
「一人何役」と言ってもこき使われる職場とは違い、
運営会社いせんの事業は従業員の「多能化」と合わせてカフェや旅行業務へと広がり、
売上高は20年間で8倍に増えている。
経済成長を決める要素の内「労働力」が減るなら、もう一方の「生産性」を上げるしかない。
ホテルいせんのマルチタスクやドンキホーテの権限移譲型店舗運営は、
個人の能力を最大限に引き出した生産性アップの企業経営を示している。
<スーパーの惣菜・米飯・寿司>
<鶏唐揚ヘルシーカップ>
*街角通信は毎週1回、配信しています。
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