消費の2極化に対応する食品スーパー

「止まらぬ円安、内需に影」

円相場が1ドル154円まで下落した。

再び輸入原料の値上がりが予想され、内需の下振れリスクから

小売業の収益に影響が出る思惑から株式市場では小売り株は軒並み下落した。

円安は輸入コストの上昇をもたらす一方、訪日客需要を押し上げる。

日本政府観光局が発表した3月の訪日客数は308万人で、

2019年同月を11.6%上回り、年間目標4000万人を超えそうになっている。

地域別には韓国が66万人、台湾が48万人、中国が45万人と続き、

1人当りの旅行支出は19年比41.6%増の20万8700円と

円安による割安感が高価格帯の消費を押し上げている。

SNSでは観光地で1杯¥2000のラーメンなどが話題になった。

帝国データバンクは4月に2806品目の食品が値上げされると発表、

2023年10月以来6か月ぶりに2000品目を超えた値上げになり、

ハムやソーセージなどの畜肉製品や冷凍食品の加工食品が最も多い。

日本冷凍食品協会は2023年の冷凍食品の生産・消費統計を発表、

値上げ効果もあり全体の出荷額は過去最高額を記録した。

外食需要の回復もあり、業務用は1%減の78万8000トン、

家庭用は22年比6%減の75万7000トンと業務用を下回った。

値上げ効果もあり、全体の出荷数量は3%減だが出荷額では2%増と過去最高になった。

円安の影響が大きいのが米国産牛肉を使用する牛丼各社で、

使用される米国産牛バラ肉は現在1kg¥1180~¥1300と値上がり、

コメの値上がりもあって、牛丼大手3社の食材は1杯当り96.9~104.3円と38%値上がりした。

値上り要因は円安だけではない。

おにぎりや和食に欠かせない海苔が2年連続の不作で値上げになる。

海苔の主産地有明海の海水温の上昇で赤潮が発生し、

海苔の収穫量は半世紀ぶりの低水準になり、

価格は前年より2割上昇、足元の産地価格は全形1枚当り21.17円と過去最高を更新。

産地価格の上昇を受け、6月にも主要メーカーは一斉に値上げし、

希望小売価格を12~26%値上げする。

「賃上げとその影響」

鉄鋼などの労働組合で構成する基幹労連は春期労使交渉で6割に当たる組合が

要求額に対し満額かそれ以上の回答をしたと発表、

ベースアップは平均で1万7157円で03年に発足いらい最高額だった。

ベア率は平均6%となる。

帝国バンクが1050社からネット調査した20年の賃上げについて、

賃上げ率が5%未満の企業が調査対象企業の6割に相当し、

3%台が最多で2割、据え置きと回答が2割弱あったとした中で、

調査のうち中小企業が87%を占める920社だった。

連合の発表ではベアと定昇を合わせた賃上げ率は3283組合で平均5.2%で、

中小組合でも4.75%の賃上げになり、92年以来の高水準だったと発表。

賃上げの一方、その影響は業績にも影響を与え、

帝国バンクによると、飲食店の倒産件数が2023年度802件と前年比56%増になった。

コロナ禍の支援制度が終わり、原材料の値上がりから倒産に追い込まれた事例が多く、

24年は更に厳しい経営環境が待ち受けている。

日経が上場小売企業63社の業績を集計したところ、

2025年の営業増益率は5%の1兆4640億円と前期の3分の1に縮小する見通しだ。

相次ぐ値上りで消費者の選別消費の傾向が高まり、

食品や日用品を中心に販売が伸び悩むことが予想される。

今後、物価の影響を考慮した実質賃金がプラスに転じるかが焦点になる。

「食品スーパー、価格のジレンマ」

イオンは先月、PB商品「トップバリュー」シリーズの28品目を2~23%値下げを発表。

サラダ油やマヨネーズなど定番商品やペット用品が中心で、

値下げは23年9月、12月に続いて3回目で合計値下げ数は88品目になった。

DS「ドン・キホーテ」を運営するPPIHは、

顧客や従業員による商品の評価を価格に反映し、最大3割の値下げをすると発表。

独自の電子マネー会員や従業員の選挙方式で値下げする商品を決める。

会員が購入した商品について「いいよ」と「低評価の「ビミョー」の2択で

評価の高い商品を全国で1~3割の値下げをする。

総合スーパーのユニーでも同様な方法で約300商品を2~3割値下げする。

国内では物価上昇・賃上げの気運が強まるが、日常消費には力強さを欠いている。

食品スーパーでは

値上げはポジティブに見ているが、価格だけでは将来はない、との意見がある。

1品当りの単価上昇で購入点数は減少しているが、

コロナ禍が収束して集客数が増えつつある中で売上げは伸びている。

デフレからインフレへと国の政策が変化していく中で、

激安スーパーの売価に消費者は引きつけられている。

「スーパーは高い」、と思われないように食品スーパーは

NB商品や日常・定番商品の安さを出しながら品質重視の商品を売り込む。

 

<スーパーの惣菜・米飯・寿司>

<おにぎりオードブル>

*街角通信は毎週1回、配信しております。

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